冬の口腔乾燥対策と知覚過敏予防を徹底しよう
こんにちは、りお歯科クリニック歯科医師ブログです。
今年最後のブログになります!
今年はこのまま暖かい冬を迎えるかと思っていましたが、例年よりずいぶん早い初雪でしたね。
スタッドレスタイヤへの交換が間に合わなかった、という方もいらっしゃるのではないでしょうか(笑)。
気温も急に冬らしくなり、空気の乾燥だけでなく、手などお肌の乾燥も感じるようになってきました。
実はこの「冬の乾燥」は、お口の中にも大きく影響します。
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冬に口が渇きやすくなる理由
空気中の水分量が減少すると、体内の水分も蒸散しやすくなります。
それにより唾液の蒸散も進み、口が渇きやすくなります。
実際、寒冷な環境下では、加湿器を使わないと室内湿度が低下し、口腔内の湿潤状態が保てなくなることが知られています。
また、ある研究では、暖房環境下では唾液の分泌量が有意に低下すると報告されており、冬季の暖房使用は唾液量を減少させる要因になり得ると考えられています。
マスク着用と口腔乾燥の関係
冬場にマスクを長時間着用することで起こる「マスク口腔乾燥」が話題になったことがありました。
しかし、海外の大学で行われた研究では、マスク着用による唾液量や口腔環境への有意な悪影響は認められていません。
※ただし、マスクをしていても口呼吸をしていないことが前提です。
むしろ、マスクやマフラーで口元を覆うことで、冷気から口腔内を守り、乾燥を軽減できる側面もあります。
とはいえ、冬特有の乾燥した空気による口腔乾燥を放置すると、口臭や虫歯、歯周病のリスクが高まります。
そのため、冬は特に意識した対策が重要です。
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なぜ口腔乾燥は、口臭や虫歯・歯周病のリスクを高めるのか
冬季の口腔乾燥が進むと、歯や粘膜への悪影響が生じやすくなります。
唾液には、
口腔内の酸性度を中和し、細菌の増殖を抑制して虫歯を防ぐ働きがあります。
実際、口腔乾燥症の患者では、唾液の喪失により口腔内が酸性に傾き、虫歯リスクが高まることが報告されています。
さらに、唾液中の抗菌成分が不足すると、歯周病菌が優勢になるなど、
口腔内菌叢の不均衡(ディスバイオシス) が生じる可能性もあります。
特に高齢者や薬剤を内服している方は、もともと唾液分泌が低下しやすいため、冬季の乾燥で症状が悪化しないよう注意が必要です。
室内の湿度管理と唾液分泌促進による乾燥対策
冬は暖房によって室内が乾燥しやすくなるため、加湿器で**適切な湿度(40~60%程度)**を保つことが効果的です。
ある研究では、夜間に37℃・相対湿度100%の加湿空気を吸入したところ、
昼間の口渇感や早朝の口内不快感が大幅に緩和されたと報告されています。
さすがに毎晩このような吸引をしながら眠るのは現実的ではありませんので、
ご家庭では寝室やリビングに加湿器を設置し、エアコンやファンヒーターの風が直接当たらないよう工夫しましょう。
また、マスクをしている場合でも換気はこまめに行い、室内の空気を入れ替えることも大切です。
日常生活で意識したいポイント
外出中や仕事中には、次のような点を心がけて、体内と口腔内の水分を保ちましょう。
・こまめな水分補給
冬は寒さのため喉の渇きに気づきにくくなりますが、定期的に水やお茶を飲むことが大切です。
特に就寝前や外出時には意識して水分を摂り、口の中を潤しましょう。
・鼻呼吸の徹底
暖かい室内から寒い屋外へ出る際などは、マスクやマフラーで口元を覆い、鼻呼吸を心がけることで口腔の乾燥を防ぎます。
口呼吸は口腔内を乾燥させやすいため注意が必要です。
・よく噛む食事
繊維質の多い野菜や穀物を意識してよく噛むことも、唾液分泌を促します。
生野菜やりんごなど、噛みごたえのある食品を取り入れるのもおすすめです。
また、シュガーレスガムの咀嚼により唾液分泌量が増加することも研究で示されています。
これらの習慣によって唾液量を増やし、口腔内を潤すことで、口臭や虫歯・歯周病、口内炎の予防につながります。
実は冬に増える「しみる!」知覚過敏の原因
冬は「冷たい」「暖かい」といった温度差が大きくなり、その影響で歯の知覚過敏(しみる症状)を訴える方が増える傾向があります。
外気の冷たさと室内の暖かさを行き来することで、口腔内環境が急激に変化し、歯が刺激を受けやすくなるためです。
さらに、乾燥によって口腔内の水分が失われると、象牙質細管内の体液が動きやすくなり、
歯の神経が刺激されて「キーン」とした痛みが生じます。
これを 動水力学説 といいます。
実際、知覚過敏患者の約75%が冷たい刺激によって痛みを感じると報告されており、
冬場に症状が強く出やすいことが分かっています。
冬に知覚過敏が悪化しやすい理由
冬は唾液量が減少しやすく、唾液による歯の保護作用(緩衝作用・再石灰化作用)が弱まります。
その結果、歯の表面が傷つきやすくなります。
特に、年末年始でミカンやワイン、ビール、炭酸飲料などの酸性飲食物を頻繁に摂ると、
エナメル質が侵され、冷たい刺激や摩擦に敏感に反応しやすくなります。
さらに、歯ぎしりや噛みしめ、寒さで歯をカチカチとさせるタッピング、
歯肉退縮による根面露出、過度なブラッシングなども知覚過敏の原因となります。
これらの冬特有の要因が重なることで、歯がしみる症状が現れやすくなるのです。
知覚過敏対策:日常ケアと歯科での治療
知覚過敏の予防・緩和には、日常的なセルフケアと、必要に応じた歯科治療があります。
・温度管理に注意
冷たい飲み物や熱い飲み物を急に口に含むと、歯が痛みやすくなります。
ストローを使ったり、マスクやマフラーで口元を覆ったりするのも有効です。
・適切な歯磨き習慣
硬い歯ブラシや強い力でのブラッシングは、歯肉退縮の原因になります。
柔らかめの歯ブラシで、やさしく丁寧に磨きましょう。
・知覚過敏用歯磨剤の使用
硝酸カリウムやフッ素、アルギニン配合の歯磨剤は、知覚過敏症状の緩和に役立ちます。
・フッ素や専門的処置
歯科医院では高濃度フッ素塗布やコーティング、ナイトガードなどの治療が行われます。
症状が続く場合は、早めに歯科で相談しましょう。
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まとめ
冬は空気の乾燥や気温差により、口腔内の乾燥や知覚過敏といったトラブルが増える季節です。
唾液は口腔内を潤し、虫歯菌を抑える重要な役割がありますが、冬は唾液量が減少しがちです。
加湿、水分補給、ガム咀嚼などで唾液分泌を促し、
知覚過敏には温度差や酸蝕を避け、適切なケアを続けていきましょう。
それでは、皆さま
よいお年をお迎えください。
よくあるご質問(FAQ)
Q1.
冬に口が渇きやすくなるのはなぜですか?
A.
冬は空気の乾燥や暖房の影響で唾液の蒸散と分泌低下が起こりやすく、口腔内が乾燥しやすくなります。
Q2.
口腔乾燥は虫歯や歯周病の原因になりますか?
A.
はい、なります。唾液が減ると細菌の増殖を抑える作用が弱まり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
Q3.
冬に歯がしみる(知覚過敏)が悪化するのはなぜですか?
A.
冬は温度差と乾燥により象牙質が刺激を受けやすくなり、冷たい空気や飲食物で痛みが出やすくなります。
Q4.
マスクをすると口の中は乾燥しやすくなりますか?
A.
口呼吸でなければ、マスク着用自体が唾液量を減らす明確な影響はありません。むしろ冷気を防ぎ乾燥を軽減する場合もあります。
Q5.
冬の口腔乾燥対策として自宅でできることは何ですか?
A.
加湿による湿度管理、こまめな水分補給、よく噛む食事やガム咀嚼で唾液分泌を促すことが有効です。
Q6.
知覚過敏は市販の歯磨き粉で改善しますか?
A.
軽度であれば改善することがあります。知覚過敏用歯磨剤は神経の刺激を抑えたり象牙細管を塞ぐ作用があります。
Q7.
歯がしみる症状が続く場合はどうすればいいですか?
A.
症状が続く場合は自己判断せず、歯科医院で原因を確認し適切な治療を受けることが大切です。